妊娠中の食事とアレルギー10か条

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さあ、プレママ生活のスタート! でも、家族の中にアレルギーにかかっている人がいると生まれてくる赤ちゃんにも心配が……。アレルギーは、遺伝と環境のどちらも関係しているといわれています。といっても、あまり神経質になると母体にも影響するのでゆったりとした気持ちで乗り切っていきましょう!



妊娠中に除去食は必要か?

妊娠中の栄養相談の中で筆者がよく質問されたのは、「妊娠中の食事が、子どものアレルギーを引き起こすのではないか?」という心配です。

三大アレルゲン「卵・牛乳・大豆」、それに「小麦・米」が加わった五大アレルゲン。これらを妊娠中に食べないように気をつけたり、制限される方も多いと思います。自身がアトピー性皮膚炎、父親がぜんそくなど、親がアレルギーを抱えているとなおさら心配は強くなります。

では、本当に妊娠期間中はアレルゲンとなりやすい、食品を除去した方がいいのでしょうか?このようなアレルゲン除去食によるアレルギー発症の予防効果については、数々検討されている中では、現在のところ「妊娠期の除去食によるアレルギー発症予防効果は明らかでない」と結論づけられているのです。

米国小児科学会・欧州小児アレルギー学会では、「明らかな根拠のない妊娠中の除去食は、母体や胎児の栄養の低下を招く危険性からも行わない」ように意見を出しています。だたし、米国小児科学会では、ピーナッツについてはアナフィラキシーショックの代表的なアレルゲンであり妊娠中の除去を勧めています。

日本では、アレルギーリスクの高い家系では、「妊娠8ヵ月以降の卵除去、アレルゲンになりやすい食品の偏った過剰摂取を避け(特に特定の食品にアレルギーをお持ちの方が兄弟・姉妹にいる場合はそのアレルゲン食品)、バランスよく食品を摂取する指導」を行っています。

妊娠中は、母体の管理と赤ちゃんのためにも体に十分な栄養素が必要になります。特に母親が食物アレルギーで除去食が必要でない限り、バランスのいい食事を心がけ、除去食を行う際には必ず医師の指示のもと行いましょう。

つわりはアレルギーの症状のひとつ?

妊娠4~5週頃に約半数以上の方が感じるつわり。このつわりの原因が、アレルギー症状のひとつであるとも。つわりの原因は、たくさんありますが目立ったもので3つの説があります。

1つめは、妊娠したことによるヒト絨毛性ゴナドトロピンホルモンが影響するという説。2つめは、胎児を異物と判断し排除する働きから影響するという説。3つめは、精神的要因による自律神経失調症から影響するという説があります。この2つめの「胎児を異物と判断し排除する働き」が、アレルギーのしくみと同じなのでアレルギー反応のひとつとも言われているのです。

つわりは大事な赤ちゃんを守るために、「ゆっくり休んでいてね」という赤ちゃんからのサインなのかもしれません。この時期は、赤ちゃんの栄養は母体からの栄養で十分補えます。栄養バランスよりも食べられる物をたくさん取って、ゆったりした気分でのりきりましょう。症状が軽くなったら、バランスのいい食事ができるようにできるといいですね。

アレルギーを予防する妊娠中の食生活のポイント①~③

①色々な食品を利用して、バランスのいい食事を心がけましょう

妊娠中に限らず、アレルギーを予防するために必要なことは、食品の偏りをなくすことです。エネルギーのもとになる「炭水化物」、肉をつくる「たんぱく質」、体の調子を整え抵抗力をつける「ビタミン」、強い骨や歯をつくる「ミネラル」のバランスが大切になります。特にカルシウム、鉄分、食物繊維などの必要量が増加しますので不足しないように、1日3食の食事から取るようにしましょう。

②塩分は取りすぎないように気をつけましょう

塩分を取りすぎると、高血圧や浮腫(むくみ)を招き、妊娠中毒症を引き起こします。魚は生よりも、焼いた方が魚の油と一緒に塩分が落ちて控えめになります。煮魚は味付けに気をつけましょう。お酢や柑橘類、香辛料、香味野菜、のり、ごまなど風味のいい食品を上手に利用して、薄味でもおいしく食べられる料理の工夫をしましょう。

③規則正しい排便習慣を身につけましょう

流産や早産の原因となる下痢を予防するためにも、暴飲暴食を避け、新鮮な食品を使用し、調理器具は清潔にします。特に、タンパク質の食品を十分に加熱する事は、食中毒の予防とともに、アレルギーの予防にもなります。そして、便秘も大敵です。妊娠中はホルモンの関係や大腸が圧迫されることなどにより、便秘しやすくなります。便秘を予防する食物繊維には、りんご、大豆、ごぼう、穀物等の「水に溶けないタイプ(不溶性食物繊維)」と、熟した果物、かぼちゃ、キャベツ、ジャガイモ、海藻等の「水に溶けるタイプ(水溶性食物繊維)」があります。これらを上手に組み合わせながら食べることで、より効果的な便秘対策になります。ヨーグルト等の発酵食品は腸内細菌を活発にします。水分も十分に取りながら、規則正しい排便習慣をつけましょう。

アレルギーを予防する妊娠中の食生活のポイント④~⑦

④鉄分を十分にとりましょう

妊娠中は、普段の約3倍の鉄分が必要になります。鉄分には、体に吸収の良い「ヘム鉄(肉・魚などに含まれる)」と、比較的吸収が少ない「非ヘム鉄(緑黄色野菜などに含まれる)」があります。非ヘム鉄は動物性のタンパク質やビタミンCを一緒に取ると吸収がよくなります。レバニラ炒めのように、動物性のものと植物性のものを、献立の中に組み合わせることが大切です。

⑤カルシウムを十分にとりましょう

カルシウムは胎児の骨や歯の生育のため、普段よりも多く必要になります。カルシウムと言えば牛乳を思い浮かべますが、牛乳はアレルギー予防のためにもあまり飲み過ぎないように、小魚、海藻、緑黄色野菜などからもカルシウムを十分に取りましょう。またリンの取り過ぎはカルシウムの利用を悪くするので、リンが多く含まれる加工食品は控えるようにします。

⑥葉酸も意識してとりましょう

聞きなれない葉酸ですが、妊娠期間中特に初期に必要なビタミンBの一種です。新鮮な野菜に多く含まれ、赤ちゃんの発育に必要な遺伝物質のDNAやRNAを構成している核酸の合成に不可欠なものです。サプリメントもありますが、ジュースなどはフレッシュで飲むなどしてなるべく食事から取るように心がけましょう。

⑦肥満に注意しましょう

妊娠前から出産までの体重の増加は10キログラム以下におさえます。甘い菓子類や清涼飲料、油の取り過ぎは肥満の原因。体重は定期的に測定して、太り過ぎないようにしましょう。また安定期に入ったら、お散歩などの適度な運動をおすすめします。

アレルギーを予防する妊娠中の食生活のポイント⑧~⑩

⑧食品添加物はさけましょう

保存料などの食品添加物は、アレルギーを引き起こす原因になります。加工食品は控え、だしを取る時にも天然の物を利用するように心がけましょう。

⑨刺激の強い嗜好品は避けましょう

コーヒーなどの刺激の強い嗜好品も、赤ちゃんに影響を及ぼすと言われています。妊娠中はたんぽぽコーヒーやハーブティーなどカフェインをおさえた飲み物でリラックスした時間をつくってみましょう。

⑩お酒はほどほど、タバコは禁煙しましょう

最近では、アルコールの缶にも妊娠中の飲酒の危険性を表示しています。過度な飲酒は、胎児の発育に悪影響を及ぼすので、お酒は控えめにしましょう。喫煙は、乳幼児突然死症候群(SIDS)を招いたり、赤ちゃんの低体重のリスクが大きくなります。お母さんはもちろん、お父さんにも妊娠中はタバコを外で吸ってもらうなどして協力をお願いしましょう。

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