高学歴親が子育てに失敗しやすい理由

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高学歴親が子どもを追い詰める。理論攻めで子どもの逃げ場なし。

「できないのは努力不足でしょ」。正論を滔々と語る親に子は無力。
反抗しないからといって、「いい子」だと信じ込んでいると、成人してから手痛いしっぺ返しが待っている。

さまざまな体験談や思いをまとめてみました。



せめて親程度の大学に

「彼女も私もせめて親程度の大学にと思うだけなんだけど……」
 一人息子を育てるワーキングマザーのヤヨイさんは、転職を繰り返しながら今の会社では管理職まで上り詰めた。入社試験の面接もするが、学生の大学名は数年前からマジックで黒塗りにされている。大学名で判断せず学生の人となりを見るよう人事担当者に言われるが、本音は「大学はどこ?」とつい聞きたくなる。
「学歴はどうしても気になる。自分自身は社会に出てから頑張って今の生活を手に入れた実感があるのに、わが子には『大学は関係ない』と言う勇気がない。ぼーっとしてて自己主張できなそうで心配。それなりの大学に入ってきちんと就職してほしい」

我が子により添えない・・・支配する

「どこからを高学歴と呼ぶかはともかく、大卒の親の子育ては難しい」と話すのは、「子育て科学アクシス」を主宰する小児心理医の成田奈緒子さん(文教大学教育学部特別支援教育専修教授)。小児心理外来で長年親子の悩みを聞いてきたが、患者の多くが高学歴親の家庭だ。
 自分ができたことはわが子もできるという根拠のない思い込みをもち、子が別の人格であることを認識できない。自分のメンツを繕うことに執心するあまり、わが子に寄り添えていないケースが目立つ。
「高学歴は弁が立つ人が多いため自分のしゃべる時間がつい長くなり、子の意見を聞いていません。子どもの自発性、積極性が強化されづらい。そこが鍛えられない彼らは自発的に動かないので、親はさらに焦る。悪循環なのです」(成田さん)

正論でせまると皮膚感覚が失われる

30代までマスコミ関係で働き、最近まで専業主婦だったミサさん(40代パート勤務)は、私大トップのK大に入学した長男をもつ。野球部に所属した高校までは何とも思わなかったのに、大学に入った途端、長男に不満を抱くように。同時に母子のケンカが絶えなくなった。
 長男はサークルには入らず、バイトもしない。大学生なのに夫より帰宅が早い。友達もいないし、当然彼女もいない。要するに「まったくイケてない」(ミサさん)。彼女が抱く理想の息子像には程遠いのだ。
「コミュニケーション能力が低く、生きる力が弱いと感じる。大学なんてK大より下の私が卒業したレベルでOK。それよりも、活発で生き生きした子になってほしかった」
「私が何でも全部言っちゃうから、もう親の言う通りにしたくないのかも。自分の足で踏みだせないんだと思う」
 視野が広がるから留学しろ。社会勉強になるからバイトしろ。友達ができるからサークルに入れ。どれも正解だ。だが、前出の成田さんはこう言う。
「正論を言い過ぎるのも高学歴親の特徴。言葉で責めてスキンシップを怠ると、良好な関係を築きづらい」

一番の病理はいいこすぎること

「一番の病理はいい子すぎること。子どもに感情を表出させる機会を与えていないから、コミュニケーション脳といわれる前頭葉を使って行動を起こす経験を積めないのです」(成田さん)
 背景にあるのは親たちが「いい子を育てる=自分の評価」ととらえる風潮だ。特に高学歴夫をもつ専業主婦にその傾向が強い。子どもは親の意向を敏感に感じ取り、本来なら「もう、いい子はやめた!」とばかりに荒れる思春期を自我封印で静かに過ごす。あれはダメ、これもダメと何でも管理する空気が「教育現場だけでなく社会全体に強いのも影響している」(同)

どうしたらいいの?

会話やスキンシップの重要性が説かれているため、ワーキングマザーは「子どもにかかわる時間が短いからダメだ」と思いがちだが、実は働く母のほうが子育てにはつまずかないという。
「圧倒的に時間がないので過度な干渉をせずに済む。保育園や学童保育で大人の目が入るし、その集団の中で子どもはさまざまな経験を積む。専業主婦の方には、趣味を持つなど、とにかくわが子よりも自分に目を向けてと話します」(成田さん)
 ケンカ上等。放任万歳。親子で思いをぶつけあい、学歴よりも大事なものを見つけたい。

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