私が初めて「星の王子さま」を読んだのは小学校の高学年の頃だったと思います。その頃の私には本の内容は難しくてたぶん、このストーリーの本質の部分は、読み取れなかったと思うのですが、読み終わった後なんとも言えない寂しさと言うか切なさみたいな思いを感じて、いつまでも心から離れなかったのを覚えています。
星の王子さま
この本は何度も読み返したくなる本の一冊として私の心に残りました。けれど、まだ11歳くらいだった私には、作者が本当に伝えたかったことは分かっていなかった気がします。
それでも、難しいこと抜きで何となく心に残り、中学生になって読み返すとまた違う発見があったのです。
当時の私は、友人関係や親との関わり方について深刻に悩んでいました。
今から思うと、些細なことだったわけですが、思春期の私にはとても苦しい時期でした。
そんな時、星の王子さまの中に書かれている言葉。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」が心に飛び込んで来ました。
娘にとっての星の王子さま
娘が小学校にあがってすぐに、私は「星の王子さま」を読んで聞かせました。
けれど、あまり興味を示すことはなく、いつも本棚の隅に置かれているだけの本を時々引っ張り出して読むのは、私だけでした。
けれど、高校受験を控えたある日娘が、星の王子さまの絵本を読んでいたのです。
昔の私と同じように、娘も何かに悩んでいるのだろうかとふと不安が頭をよぎったのですが、聞くわけにもいかずに時だけが過ぎてしまいました。
今でも時々、自分の部屋に持って行って読んでいるようです。
大人のためのファンタジー?
この絵本は、もしかしたら子どものためではなく、大人のためのファンタジーなのではないかと感じさせるほど、読むたびに、その時の自分の心の変化を感じさせてくれる絵本なのです。
王子さまの住む小さな国にある日突然咲いた一輪のバラの花は、猜疑心と虚栄で王子さまの心を悩ませます。王子さまは美しいそのバラが大好きだったのに、理解出来なくなり旅に出てしまいます。
けれど旅をする中、時間が過ぎて王子さまは気づきます。(言葉じゃなくてふるまいで花を理解すれば良かった)(あの小細工の陰にかくれた優しさに気づいてあげたら良かった)
このように星の王子さまは、大切な何かを失った人にしか分からない切なさがあり、胸に響きます。
子どもに見えて大人には見えないもの
それは多分純粋さだったり、当たり前にあるものを大切に思う気持ちだったり。
子供の頃は見えていたものが、大人になるとぼやけてしまうもの、そんな中に本当に大切なものがあるのだと教えてくれます。
だから、時々開いて読み返したくなるのだと思うのです。
大切なこと
多分この絵本を読んだ人は、それぞれ違う感想を持つと思いますが、根本にあるのはやはり「愛」なんだと思います。
王子さまは、自分の故郷に置いてきた花のことが離れるほど気がかりで仕方なくなり、愛おしくなります。きっと愛すると言うことの本質は、相手の面倒なところもすべてを含めて許すこと、そしてどんなことがあっても逃げないことだと、この絵本の中の言葉たちが教えてくれます。