「ズンズン運動」により生後4カ月の赤ちゃんが呼吸困難になり、死亡した痛ましい事件。
その判決が下り、実刑ではなかったことに衝撃を覚えます。
講演会を開き本も出版していたNPO法人の代表が、自ら考案・施術していた「ズンズン運動」とは、どういうものだったのでしょうか。
●事件の概要
平成26年6月、NPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」の代表(当時)姫川尚美が、4カ月の赤ちゃんにズンズン運動を施しているときに、赤ちゃんの呼吸が止まり、救急車で搬送されました。
赤ちゃんは6日後に死亡。
元代表は、自分が殺したという認識はない、としていました。
今回、大阪地裁で、業務上過失致死により、禁錮1年、執行猶予3年の判決が言い渡されました。
●ズンズン運動とは?
「ズンズン運動」は、元代表が考案し施術していた赤ちゃんマッサージです。
赤ちゃんは、本来丸まっているものではなく、背骨をピンと伸ばしているもの。
そんな信念のもと、赤ちゃんの体をまっすぐにし、全身をそらす動きを多く取り入れています。
元代表のブログによると、ズンズン運動には「仙骨ズンズン」と「鼠蹊部ズンズン」があるそうです。
仙骨ズンズンは、うつぶせで行い、からだの表面の静脈を心臓に向かって押し返す運動。
鼠蹊部ズンズンは、あお向けで行い、内臓全体にズンズンの振動が伝わる運動。
・・・らしいです。
今回は、首や胸を圧迫しすぎて呼吸を停止させたように報道されていますが、鼠蹊部(太ももの付け根)をズンズンしても呼吸は止まりそうもないので、仙骨ズンズンが悪かったのでしょうか。
元代表が実際にズンズンをしている画像や動画を見ると、全身エビぞり、首ひねり、足の指そらしなど・・・
どれも気持ち良いマッサージとは程遠く、赤ちゃんが気の毒な感じです。
マッサージと言うより、整体に近い感じ。
赤ちゃんの背骨や首の骨から、グキッ、ボキボキッ、という音が聞こえて来そうな感じのものもあります。
YouTubeにも多くの動画がアップされていますが、これが本当に赤ちゃんのためになる行為なのか、疑いたくなります。
●ズンズン運動の効果は?
元代表の話では、ズンズン運動は、「血流促進効果が絶大」だそうです。
ズンズン運動は、下半身から心臓に血液が流れるのを助けるので、静脈の流れが良くなり、心臓のはたらきも良くなるそうです。
さらに、免疫力を高める事ができ、アトピーやダウン症にまで効果ありと宣伝されて広まりました。
しかし、実際にアトピーが治ったとか、ダウン症が改善したという症例は、見つかりませんでした。
免疫学に関係ありそうな本も書いていますが、元代表は免疫学や医学を専門的に学んだわけではないようです。
マッサージや整体に関する免許も資格も持っていません。
本当に効果があったのでしょうか。
http://ameblo.jp/tuimen/
●NPO法人とは?
NPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」は、事件後、創立12周年の日に解散したそうです。
ということは、12年間もNPO法人として活動してきたという事です。
その間、6000人もの乳幼児に「ズンズン運動」を施術し、平成25年2月には1歳の男の子が死亡してしまう事故もありました。
こんなに長い間、危険な活動を続けて来られたのは、元代表の宣伝技術と、会社名の前につけられた「NPO法人」という言葉があったからだと思われます。
NPO法人は、特定非営利活動促進法(NPO法)に照らして法人格を与えられた民間の非営利団体で、「NPO」は、Non Profit Organizationの頭文字です。
健全な非営利団体であるという国のお墨付きがあったから、安心して赤ちゃんを預けたという方も多いと思います。
何となく、公の慈善団体のように感じてしまう「NPO法人」ですが、「非営利」かどうかの審査は甘いようです。
「キッズスタディオン」の代表が行うズンズン運動の料金は、何と、1時間1万円!
これでも、非営利と言えるのでしょうか。
●赤ちゃんを守ろう!
何の資格も持たない人が、何の医学的根拠もなく、医療行為に近いことをする。
こんなことが普通に許されて良いのでしょうか。
今回、なくなってしまったお父さんの言葉が、胸に刺さります。
「軽すぎる判決で納得できない。息子に申し訳ない。」
ズンズン運動さえやらせなければ・・・という後悔が消えることはないでしょう。
高額の料金を払ってでもも、体調を良くしてあげたいと考えていたご両親。
執行猶予つきの判決に納得がいかないのは当然です。
お父さんの言葉は、続きます。
「今後、乳児向け施術行為に対する規制強化を国に求めたい。」
NPO法人でなければ・・・
1人目の死亡のときに、規制が強化されていれば・・・
無資格者が乳幼児にマッサージや整体を行うことを禁止、NPO法の見直し、現NPO法人の活動内容の調査など、早急な対応が望まれます。
このような悲劇が繰り返されないように。