子どもがダダをこねたり、きょうだい喧嘩を繰り返したり、叱りたくもないのに叱ってしまったり、子育ての悩みはキリがありません。我が子の寝顔を見ながら、今日一日を振り返り、また大声を出してしまった…またうまく向き合ってあげられなかった…と、自己嫌悪に陥ってしまうお母さんも多いのではないのでしょうか。
ここでは、子どもとのコミュニケーションの手法や、考え方、心構えの中から、子育ての現場で役に立つ、とっておきの5つの決めワザを紹介します。
「承認」気持ちをしっかり受け止める
子育てにおいて一番大切なのは、一言で言うと「子どもの気持ちを受け止める」ことです。
子どもが投げかけてくれる、言葉や行動や表情などのさまざまなメッセージをキャッチすることです。子どもがボールを投げてくれたら、どんなボールも、まずすっぽりと受け止めてあげましょう。そして、「キャッチしたよ」と伝えて下さい。
まず受け止める。よく見て、よく聞いて、気持ちをわかってあげて、それを「わかっているよ」と伝えることです。
これは、子どもに対して常に意識していたい、もっと大きな”心構え”のようなもとの言えるかもしれません。
例えば、スーパーで「お菓子買って!」とダダをこねる子どもに対して、「わかったわかった。じゃあ買ってあげる」では、単なる甘やかしでしょう。一方、「何言ってるの?駄目よ!」と言うのは、子どもの気持ちを頭ごなしに否定していることになります。
「そっか、お菓子が欲しいんだね」とまずは子どもの気持ちを汲んで言葉にしてあげます。それが承認です。その後で、お菓子を買ってあげるのか、買ってあげないのかは別問題で考えて下さい。
「そっかお菓子が欲しいんだね。」「でも、昨日もお菓子買ったから今日は我慢してね。」と、まずは子どもの気持ちをしっかりと受け止めて、言葉にしてあげることで、子どもに「あなたの気持ちはちゃんと分かっているよ」ということが伝わります。
「傾聴」子どもの話をしっかり聞く
子どもの気持ちを受け止めるためには、「よく聞くこと」が大切になってきます。意識して、心を込めて、しっかりと聞き取ることです。
ここでのポイントは「しっかり聞いているよ」ということを、どれだけ相手に伝えられるかということです。
いくらお母さんが「ちゃんと話を聞いているつもり」でも、子どもがそう感じていなければ、「聞いていない」のと同じことです。
自分の話をしっかり聞いてもらえない辛さ、歯がゆさ、虚しさなどは、お母さん自身にも何か身に覚えがあるのではないでしょうか。
子どもはきっと、「こんなことがあった」という事実以上に、「だからとっても楽しかったの!」「悔しくて仕方なかったよ!」などといった想いを分かって欲しいのだと思います。
話の内容もしっかり聞いて、さらにその想いまで分かってくれる、共感してくれる。自分のように一緒に喜んでくれる。一緒に悲しんでくれる。これこそが最高の”聞き上手”です。
具体的には、
・用事をしている手を止める。
・子どもの目を見る。
・「うん、うん」と頷いて聞く。
・子どものことばを繰り返す。
・話を途中で遮って、評価したりアドバイスしたりしない。
などがポイントです。
話の途中で口を挟みたくなっても少し我慢して、最後まできちんと聞いてあげましょう。アドバイスや評価は話を聞いてからでも遅くありません。
「私メッセージ」私を主語にして伝える
今度はお母さんの方から何か伝えたいときのコツをお伝えします。
一日を振り返ると、子どもへの言葉かけのほとんどが、「○○しなさい!」「早くして!」「○○しちゃダメでしょ!」なんて、指示や命令、禁止ばかりになっていることはありませんか?
こうした言葉掛けは、コミュニケーションというより一方的な押し付けや決めつけです。これでは、子どもも「だって…!」と反抗して、”売り言葉に買い言葉”になってエスカレートしてしまうということになってしまいます。
こんな時にお勧めなのが「私メッセージ」です。
「あなたは」という「あなた」を主語にしたメッセージを、「私」を主語にしたメッセージに変えてみるのです。
「お母さんはうれしい/悲しい」
「お母さん、困っちゃうな/助かるな」
「お母さんは、こうして欲しいな」
このように、「私」を主語にして、自分の気持ちをまっすぐにメッセージにすると、不思議とすんなり子どもに伝わります。
力ずくで押しつけようとする”一方ていな言葉掛け”から、相手を理解し共感しようとする”双方的な言葉掛け”に変えてみてください。
「リフレーミング」色めがねをはずす
人には、たくさんの「考え方の枠(フレーム)」があります。こうした思い込みの枠を外して組み替えることがリフレーミングです。
特に子育てにおいては、「子どもとは○○なものである」「子どもとは/母親とは、こうでなければならない」「子育てとはこうあるべきである」などというふうに、誰にでもさまざまな思い込みがあるのではないでしょうか。
しかし、その思い込みは本当に正しいものなのでしょうか。もし、その色メガネを外したら、子どもはどう見えるでしょうか。
例えば、「うちの子は全く言うことを聞かない!」ということで悩んでいるとすると、「子どもは親の言うことを聞かないものだ」という前提に立ってみます。
すると、子どもが言うことを聞かなくても、「どうして言うことを聞かないの?」ではなく、「どうしたら言うことを聞いてくれるだろう」という気持ちになれます。
このようにして、問題解決に向けて、具体的な対策を考えられる状態にようやくなれるのです。
視点を変えるためには、「自分の今の立場を、相手とチェンジしてみる」のも効果的です。つまり、「もし私が子どもの立場だったら?」あるいは「自分が子どものときはどうだったか?」を考えてみることです。
「質問」問いかけて答を引き出す
子育ての場面で、ついつい「どうして?」という言葉を使いがちではありませんか?この「どうして?」という言葉には、避難や問い詰めるニュアンスがつきまといます。
「どうして、あなたは言うことを聞かないの?」「どうして、すぐ叩くの?」「どうして、いつもあなたはそうなの?」
こう問われて、子どもは「それは○○だからだよ」答えられるでしょうか。
このような攻撃的な言葉に対して、子どもは「だって…」と言い訳したり、「そんなことしてないもん!」と逃げたり、何も言い返せずに黙りこんだりするのは無理のない反応です。
子どもに対して「理由を明らかにしたい、あなたの考えを聞きたい」といいメッセージを伝えるためには、「どうして、なぜ」の代わりに「どうしたら、なに」を使えばいいのです。
例えば、学校に行きたくないと言い張る子どもに、「どうして学校に行かないの!?」と言うのではなく、「学校に行きたくないのは、何が原因かな?」「どうしたら、学校に行けるようになると思う?」というふうに、「あなたが悪い」といった前提を外して、対等な立場で、一緒に原因を探そうとする姿勢が大切です。
子どもに問いかけるときは、くれぐれも問い詰めたりしないように注意してください。そして、なるべく時間をかけて、ゆっくりと聞くことも大切です。
子どもの心を無理やりこじ開けたり、答を根ほり葉ほり探そうとしては、本当の気持ちはかえって隠れてしまいます。
親というものは往々にして、自分の予想した答をすでに用意しているものです。そんな先入観で聞き出そうとしても、誘導尋問になるのがオチです。先入観をはずして答えを用意せずに聞く。これを意識してみることが大切です。