幼児の成長段階で気になることの一つに「夜のおねしょ問題」があります。
おねしょは昼間のお漏らしとは違い苦労するママも多いでしょう。ほぼ7割の子が小学校に行く前の5歳ごろにはおねしょがなくなります。
ですが、小学校高学年になっても「おねしょ」をしてしまう子供は意外と多いんです。
でもそれは幼児期の「おねしょ」ではなく、『夜尿症』の可能性が高いです。小学生のおねしょに怒るのは逆効果!まずは夜尿症について知ってください。
夜尿症ってなに?
夜尿症とは生まれたときから続く夜間寝ている間のおねしょのことで通常5歳ごろから御両親が気にし始めます。
実際に気がかりになるのは小学校に上がってからも継続する場合が多いようです。
どの程度のおねしょの回数を御両親が問題にするかは年齢によって異なりますが、一般的には1週間に1回以上のおねしょが続いていれば「夜尿症がある」としています。
女の子に比べて男の子に多いのですがだいたい5歳で15~20%のお子さんにみられ、10歳で5~10%、15歳で1~2%ぐらいにみられます。
つまり小学校前はまだ「おねしょ」で小学校に通うようになってからするのが「夜尿症」ということなんです。
http://www.twmu.ac.jp/KC/Urology/child/bedwet.html
夜尿症の原因を知ろう
夜尿の原因は、「子どもの性格の問題」「保護者の育て方の問題」といわれることがありますが、これは、誤った考え方であるといえます。
夜尿症の原因は下表のようなことが考えられています。
●夜間の尿量が多い(抗利尿ホルモンの夜間分泌不足)
夕方以降の水分摂取量が多いと、夜間の尿量が多くなります。
しかし、夕方以降の水分摂取量が適当でも、夜間の尿量が多い子どもがいます。
夜間の尿量をコントロールするのに重要なのが、抗利尿ホルモンです。
これは、脳から分泌されるホルモンで、昼間少なく、夜になると多く出ます。
そのため、夜につくられる尿量は昼間につくられる尿量よりも少なくなります。
抗利尿ホルモンの分泌のリズムは成長とともに整ってきますが、夜尿症の子どもの中には、昼間は普通の子どもと同じなのに、夜だけ抗利尿ホルモンの出方が悪いため、夜間の尿量が多くなっていることがあります。
●夜間の膀胱容量が未熟(不安定膀胱)
夜間の膀胱機能は子どもの成長とともに発達していき、夜間は昼間の1回の尿量の1.5~2.0倍はためられるようになり、4~5歳になると夜間トイレに一度も行かなくてもよい位のおしっこをためられるようになります。
しかし、夜尿症の子どもの中には、膀胱の機能が未発達で、膀胱のためが小さいことがあります。また、寝る前に排尿しても全部出せずに残尿が残る場合もあります。
●睡眠の影響
尿意を感じると夜間に目覚めてトイレで排尿する子どもがいますが、目覚めない子どももいます。
子どもが尿意を感じて覚醒できないのは子どもの睡眠が深いためであり正常です。
夜間尿量の減少、夜間膀胱容量の増加は睡眠の質に影響されているのではとの考えもありますが、まだ充分に解明されていません。
この他にも環境の変化などによる精神的ストレス、まれではありますが膀胱や腎臓の器質的な異常なども原因としてあります。
http://www.kyowa-kirin.co.jp/onesho/explanation/exp04.html
夜尿症は3つのタイプがある
夜尿症は大きく分けて3つのタイプがあります。
(1)多尿型夜尿症
睡眠時膀胱容量を上回る尿が夜間睡眠中に造られて夜尿が生じるタイプの夜尿症です。
夜尿のない児は、膀胱が尿でいっぱいになったという情報が神経を介して大脳に伝わると、尿意を感じ自分から起きてトイレに行き排尿します。
一方夜尿症児は、膀胱がいっぱいになったという情報が大脳に伝わっても、睡眠が深く尿意を感じることが出来ず、布団の中で排尿(=失禁)してしまいます。
(2)膀胱型(膀胱容量低下型)夜尿症
夜間睡眠時に膀胱容量が低下し、十分量の尿を膀胱に溜められないために起こるタイプの夜尿症です。この原因は完全には解明されていません。
(3)混合型
これは(1)と(2)が合併したタイプです。つまり夜間尿量が多く、睡眠時膀胱容量が低下したタイプです。実際にはこのタイプの夜尿症が圧倒的に多いものと思われます。
夜尿症の治療
夜尿症の治療には2つあります。
【おねしょアラーム】
寝る前におねしょするとアラームが鳴るパットをつけて寝ます。おねしょするとアラームが鳴るので、すぐに起こします。
そのときトイレに行っても行かなくても、どちらでもよいです。
就寝時排尿が始まったときに起こされると排尿が急に止まるので、これを繰り返すことで膀胱容量が増えて夜尿症が治ります。
この治療法を続けることで、3ヶ月で50%、6ヶ月で70%の患児が治癒するといわれています。必ず親御さんが起こさなくてはならないので親御さんが寝不足になってしまう可能性があること、保険適応ではないので専用アラーム、パットを自費で購入していただかなければならないことが欠点ですが、全く薬を使わないので副作用の心配がありません。
【薬物治療】
抗利尿ホルモン薬(夜間の尿量を濃くして少なくする薬)、抗コリン薬(膀胱機能を安定させ、膀胱に尿を多くためられるようにする薬)、抗うつ薬(弱いながら抗利尿ホルモンの分泌を促し、抗コリン作用も持つ薬)があります。
問診、尿検査などからお子さんの夜尿のタイプに適した薬を選んで投与することになりますが、それぞれ副作用の可能性がありますので、それを十分に説明した後に本人、親御さんの希望に沿った薬を選びます。
とはいえ、夜尿症は自然に治る事のほうが多いのです。
まずは生活習慣の改善を心がけてください。
生活習慣の改善
夜尿症の3原則は『夜起こさない』『親も子供も焦らない』『決して怒らない』です。
生活スタイルは、まず最初はカフェインの含んでいる飲み物をやめて、昼間は十分水分をとって規則正しく(6回以上)トイレに行く習慣をつけるように指導します。
また便秘をしないように食物繊維の多い食事を心がけるようにしてください。
直接的効果はないのですが夕食後の水分は減らして寝る前にトイレに必ず行っているかどうかもう一度確認します。
夜中に無理にトイレに起こすと、寝ている時間におしっこをする習慣がつきおねしょが治りにくくなることがありますので夜はぐっすり寝させてあげてください。
またおねしょをしても決して怒ってはいけません。おねしょをしてがっかりするのは親よりも子どもなのです。そこに輪をかけて叱ってしまったらますます悪化してしまいます。
小学校の低学年の間はこのようにして自然に成長を見守るのもよい選択肢のひとつです。
とは言っても、やっぱり夜中のおねしょは気になりますよね。
布団が汚れる事でイライラするのであればオムツをはかせてもかまいません。
オムツをしているからといって夜尿症が治らないというわけではありませんので大丈夫ですよ。
ママもストレスをためず、おねしょをしなかった時にたくさん褒めてあげてください。
小学校高学年の子でも11%はおねしょをしてしまいます。
焦らずマイペースに進めていきましょう。