遊び方で変わる社会人基礎力3つ

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子どもの将来を左右するのは、勉強や習い事だけではない?!
調査によると、社会人としての自身の能力や現状に肯定的な人ほど、子どものころ「よく遊んでいた」割合が高いという。
「遊び」と「社会人能力」の関係とは?



よく遊ぶ子ほど、社会人としての能力が身に付く

若手社会人を対象にした『小学校低学年の時期における 遊び体験と自身の社会人としての能力や生活満足度に関する意識』の報告によると、自分の社会人能力に肯定的な人ほど、子どものころに「よく遊んでいた」と答えた割合が高いという。

「コミュニケーション力」「主体性」「忍耐力」「チャレンジ精神」4つの能力について、どの項目でも「よく遊んでいた」と回答した人(青色)ほど自分の能力に強い自信を持っていることが分かる。
特に、「コミュニケーション力があるか」という問いでは、「とてもそう思う」の回答者の8割以上は「よく遊んでいた」人だ。
そして、子どものころに「遊ばなかった」人(緑)ほど、どの項目においても自分の能力に自信を持っていないようだ。
「コミュニケーション力」「主体性」「忍耐力」「チャレンジ精神」。確かに、ある程度この能力に自信がないと仕事はやりにくい。その前に、自分の能力に否定的だと就職活動さえ難しいだろう。
ところで、改めて考えてみると、社会人として必要な事とは何なのか?
調べたてみたところ、経済産業省が提唱している『社会人基礎力』という3つの能力があった。

『社会人基礎力』とは?

『社会人基礎力』とは、”職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力”として、経済産業省が2006年から提唱しているもの。今回の調査で設けられている4つの能力とは少し異なるが、より簡潔かつ具体的に、3つの能力・12の能力要素で構成している。

■前に踏み出す力(アクション)
〜 一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力 〜
・主体性…物事に進んで取り組む力
・働きかけ力…他人に働きかけ巻き込む力
・実行力…目的を設定し確実に行動する力
■考え抜く力(シンキング)
〜 疑問を持ち、考え抜く力 〜
・課題発見力…現状を分析し目的や課題を明らかにする力
・計画力…課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
・創造力…新しい課題を生み出す力
■チームで働く力(チームワーク)
〜 多様な人々とともに、目標に向けて努力する力 〜
・発信力…自分の意見をわかりやすく伝える力
・傾聴力…相手の意見を丁寧に聴く力
・柔軟性…意見の違いや立場の違いを理解する力
・情報把握力…自分と周囲の人部や物事との関係性を理解する力
・規律性…社会のルールや人との約束を守る力
・ストレスコントロール力…ストレスの発生源に対応する力
今の時代には、基礎学力や専門知識に加えて、それらをうまく活用していくための『社会人基礎力』を意識的に育成していくことが重要なのだそう。
だがこれ、見てみると、すべて幼稚園か小学生くらいになればある程度身につけることができそうなことばかりだ。

集団遊びでコミュニケーションが上手くなる

「集団で遊ぶことが好きだった」と答えた人(青色)ほどこれらの能力に自信を持っていて、先ほどの遊び時間に関する集計結果よりも更に1割ほどその傾向が強くなっている。
確かに、集団で遊ぶときは、仲間とのコミュニケーションが必要なのはもちろん、協調性や思いやり、自分の感情のコントロールなどを自然に学ぶことになる。
たとえ幼少期によく遊んでいたいた人でも、一人でもくもくとゲームをしているだけではこれらのことは学べない。「考え抜く力(シンキング)〜 疑問を持ち、考え抜く力 〜」は磨けるかもしれないが。
時には喧嘩をしながらも仲間と遊ぶことで、子どもたちは少しずつ「チームで働く力 〜多様な人々とともに、目標に向けて努力する力〜」「前に踏み出す力(アクション)
〜 一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力 〜」を身につけているのかもしれない。

よく遊ぶ子ほど将来の社会生活が充実

社会人としての能力だけでなく、自分の自身の現状に対する満足度についても「遊び」との関連があるようだ。

「長所も短所も含めて自分のことが好きである」「いまの生活は充実していると思う」という2つの質問についても、「よく遊んでいた」人の方が「そう思う」と考えている割合が多い。
先の結果から、遊ぶことで身に付くと考えられる「コミュニケーション力」「主体性」「忍耐力」「チャレンジ精神」。職種によってはあまり重用視されない事もあるかもしれないが、これらはビジネスシーンに限らず大切な力。
よく遊んでいた人ほど自分の現状に満足しているということは、この4つの力がこの社会の中で”理想の自分”を築いていくのには役に立つということなのだろう。
一時皮肉って(妬んで?)言われていた”リア充” “勝ち組”になれるかどうかは、幼少期の「集団での遊び」が鍵になるのかもしれない。

子どもが群れて遊ばないのは異常現象?

———「歴史上はじめて子ども同士が自然に群れて遊ばなくなった。それが異常現象であることに多くの大人は気がついていない。」———
この調査に対する、明星大学教育学部教授の星山麻木先生のコメントだ。確かに、長い人類の歴史を考えてみると、異常。結構ヤバい事態なのかも。
———「良識ある大人は、子どもの遊び環境をどうしても再生しなければならない。町、学校、地域、空き地や原っぱやビルの隙間。子どもの豊かな遊びの環境を準備し、走り回る子どもの姿と歓声をもう一度聞かなければならない。」———
実はこの調査、よく見てみると、サンプル数930人のうち、「よく遊んでいた」(546)、「時々遊んでいた」(301)、「遊ばなかった」(83)。「よく遊んでいた」がダントツで多い。これにはホッとするが、「遊ばなかった」という、いわゆるガリ勉だった子どもが1割と、意外に多い。
このサンプルから20年後の世代である今の子どもたちは、どうなのだろうか?
先にも書いたが、経済産業省は『社会人基礎力』とは「基礎学力や専門知識に加えて必要なもの」としている。
当たり前だが、遊んでばかりで勉強をしないと、それはそれで将来困った事になるかもしれない。逆に小さい頃にがんばって毎日塾に通って勉強したガリ勉も、将来社会人になってハッピーな生活を遅れないのは悲しいものだ。何事もバランスバランス。

子どもたちよ、よく遊べ! 但し宿題を終わらせてから!

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